25階の非常口で 風に吹かれて爪を切る
たそがれの街 ソリチュード
だから好きとか嫌いの問題じゃなくて
いつか馴れ合う気安さがイヤなの
うまく云えなくてごめんね ソリチュード
探さないでね 醒めちゃいないわ
誰よりも愛してる そう云い切れるわ
二回のレコード大賞を取る合間に発表されたこの曲は、オリコンで一位を記録した。
湯川れい子のつくった詞は、タケカワユキヒデの曲としっくり馴染み、
中森明菜の孤高の面影を、よく描き出している。
高いビルの非常階段の踊り場で、爪を切る女。
後半の、男をたしなめるようなクールな口ぶりは、
明菜さん本人のものとは思えないけれど、
すこし周りから浮き上がって俯瞰してしまうような
皮肉な運命の立ち位置は、本人のものとよく似ている。
わたしは彼女が力を入れて歌い上げるときよりも、
この曲のような、静かにやわらかく歌うときのほうが好きである。
21世紀に矢継ぎ早に発表されたカバーアルバムには、
彼女のそういう魅力がたっぷり詰まった名曲の数々が
収録されている。
「別れの予感」「瑠璃色の地球」などは、本当に聞き応えがある。